新リース会計基準の全て|適用時期から財務諸表へのインパクトまで

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2026年4月以後開始する事業年度の期首からの強制適用が予定されている「新リース会計基準」について、自社への影響や必要な準備が分からず、対応に悩む経理担当者や経営者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、新リース会計基準の概要や適用時期、対象となる契約範囲といった基本から、図解を用いた具体的な会計処理、そして財務諸表や経営指標に与えるインパクトまで、実務担当者が知りたい情報を網羅的に解説します。この新基準における最大の変更点は、これまで費用処理が可能だったオペレーティング・リースも原則として資産・負債に計上する「オンバランス化」が求められることです。これにより、企業の財務体質が大きく変動するため、本記事を参考に早期の準備を進め、来る強制適用に備えましょう。

目次

新リース会計基準とは 概要と主な変更点

新リース会計基準とは、国際会計基準(IFRS)の「IFRS第16号」や米国会計基準の「ASC842」などを基礎として、日本国内で開発された新しいリースに関する会計ルールです。これまでの会計処理を大きく変更するもので、特にリース契約を利用する「借手」側の企業に多大な影響を及ぼします。この基準の核心は、これまで貸借対照表(B/S)に計上されていなかったオペレーティング・リースを含む、ほぼ全てのリース契約を資産および負債として計上する「使用権モデル」を採用した点にあります。これにより、企業の財政状態がより実態に即して財務諸表に反映されることになり、投資家などステークホルダーへの情報提供の透明性が向上します。

新リース会計基準が導入された背景

新リース会計基準が導入された主な背景には、従来の会計基準が抱えていた「オフバランス問題」があります。従来の基準では、リース契約は「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2つに分類されていました。このうち、実質的な資産の購入と変わらないファイナンス・リースは資産・負債として計上(オンバランス)されていましたが、一般的な賃貸借契約に近いオペレーティング・リースは、支払リース料を費用として計上するだけで、貸借対照表には記載されませんでした(オフバランス)。

しかし、航空業界や小売業界など、大規模な設備や店舗をオペレーティング・リースで調達している企業では、帳簿に現れない巨額のリース債務が存在する実態がありました。これは、投資家が企業の本当の負債規模を把握しにくく、企業間の財務状況の比較可能性を損なう要因となっていました。こうした問題意識から、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が共同でプロジェクトを進め、リース債務の実態を財務諸表に正しく反映させることを目的に、新しい基準が開発されたのです。

従来の会計基準との違いを比較

新リース会計基準による最も大きな変更点は、借手側の会計処理にあります。貸手側の会計処理には大きな変更はありません。以下に、借手における新旧の会計基準の主な違いをまとめました。

項目従来の会計基準新リース会計基準
リースの分類ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類原則として全てのリースを単一のモデルで会計処理(分類が不要に)
貸借対照表(B/S)への計上ファイナンス・リースのみ資産・負債を計上(オンバランス)。オペレーティング・リースは計上しない(オフバランス)。原則として全てのリースについて「使用権資産」と「リース負債」を計上(オンバランス化)
損益計算書(P/L)への計上ファイナンス・リース:減価償却費と支払利息
オペレーティング・リース:支払リース料
原則として減価償却費と支払利息を計上。費用の内訳が変化する。

オペレーティング・リースのオンバランス化

前述の通り、新基準における最大の変更点が「オペレーティング・リースのオンバランス化」です。これまで費用処理のみで済んでいたコピー機やPC、営業用車両、店舗・事務所などの賃貸借契約が、原則として全て貸借対照表(B/S)に資産と負債として計上されることになります。具体的には、リース期間中にリース物件を使用する権利を「使用権資産」として資産計上し、将来支払うべきリース料総額の現在価値を「リース負債」として負債計上します。これにより、企業の総資産と総負債が同時に増加し、財務諸表の見た目が大きく変わることになります。

借手の会計処理の統一

従来の会計基準では、リース契約がファイナンス・リースかオペレーティング・リースかによって、会計処理が全く異なりました。しかし、新リース会計基準では、この区分が原則として撤廃され、「使用権モデル」という単一の会計処理に統一されます。これにより、契約内容のわずかな違いで会計処理が大きく変わるといった事態がなくなり、会計処理の一貫性と透明性が向上します。ただし、実務上の負担を軽減するため、契約期間が12ヶ月以内の「短期リース」や、対象資産の価値が低い「少額リース」については、資産計上を免除し、従来通り費用処理のみで済ませる簡便的な取り扱いが認められています。

新リース会計基準の適用時期はいつからか

2023年5月に企業会計基準委員会(ASBJ)から公表された「リースに関する会計基準(案)」(以下、公開草案)で示された新リース会計基準は、企業の財務戦略に大きな影響を及ぼすため、いつから適用されるのかを正確に把握することが極めて重要です。ここでは、強制的に適用が開始されるスケジュールと、任意で早期に適用する場合の条件について詳しく解説します。

強制適用の開始スケジュール

公開草案によると、新リース会計基準の強制適用は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からとされています。つまり、多くの日本企業が採用している3月決算の会社の場合、2027年3月期の期首である2026年4月1日から適用が開始されることになります。

このスケジュールは、国際的な会計基準であるIFRS第16号「リース」や米国会計基準のTopic 842「リース」とのコンバージェンス(収斂)を図りつつも、国内企業が十分な準備期間を確保できるよう配慮されたものとなっています。具体的な適用開始日は企業の決算月によって異なりますので、自社のスケジュールを正確に確認しておく必要があります。

決算月強制適用が開始される事業年度具体的な適用開始日
3月決算2027年3月期2026年4月1日
6月決算2027年6月期2026年7月1日
12月決算2026年12月期2026年1月1日 ※注

※注:12月決算企業の場合、2026年4月1日より前に事業年度が開始しますが、公開草案の「2026年4月1日以後開始する事業年度」という規定により、適用は2027年1月1日から開始される2027年12月期からとなる見込みです。ただし、最終的な基準で変更される可能性もあるため、今後のASBJの公表に注意が必要です。

早期適用の可否と条件

新リース会計基準は、強制適用を待たずに早期に適用することも認められる見込みです。公開草案では、2024年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首からの早期適用が可能とされています。

例えば、3月決算の企業であれば、2025年3月期の期首(2024年4月1日)から新基準を適用することができます。早期適用を選択する主なメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • IFRSを適用している海外の親会社や子会社との会計方針を早期に統一できる。
  • 先行して会計システムや業務フローを対応させることで、他社に先駆けて経営管理体制を高度化できる。
  • 投資家に対して、国際基準に準拠した透明性の高い財務情報を提供できる。

一方で、早期適用には準備期間が短くなるという課題もあります。対象となるリース契約の網羅的な把握や、使用権資産・リース負債の計算、会計システムの改修などを短期間で完了させる必要があるため、慎重な判断が求められます。なお、一度早期適用を選択した場合は、原則として継続して新基準を適用する必要があるため注意が必要です。自社の経営戦略やリソース、ステークホルダーへの影響などを総合的に勘案し、最適な適用時期を決定することが肝要です。

新リース会計基準の対象となる契約範囲

新リース会計基準:契約の識別と判定フロー 1. 識別された資産が存在するか? No 2. 経済的便益のほとんどすべてを 享受する権利があるか? No 3. 使用を指図する権利があるか? Yes (All) No リースではない (サービス契約等) オフバランス リース契約 短期リース(12ヶ月以内) または 少額リース(5千ドル以下)か? Yes No 例外処理(選択可) 賃貸借処理(オフバランス) 原則処理 オンバランス(資産・負債計上)

新リース会計基準では、原則としてすべてのリース契約が貸借対照表(B/S)に資産・負債として計上される「オンバランス化」の対象となります。そのため、自社が締結している契約のうち、どれが「リース」に該当するのかを正確に識別することが、実務上の最初の重要なステップとなります。ここでは、新基準におけるリースの定義と、適用が免除されるケースについて詳しく解説します。

リースの定義と識別方法

新リース会計基準における「リース」とは、「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約」と定義されています。この定義に基づき、ある契約がリースに該当するかどうかは、以下の2つの要件を満たすかどうかで判断します。

  1. 識別された資産の存在:契約の対象となる資産(例:特定の不動産、車両、設備など)が、物理的に区別される、あるいは契約上明示的・黙示的に特定されていること。
  2. 資産の使用を支配する権利の移転:契約期間中、顧客(借手)がその特定された資産の使用を指示し、その使用から得られる経済的便益のほとんどすべてを享受する権利を有していること。

つまり、単なるサービスの提供を受ける契約(例:清掃サービス、警備サービスなど)と、特定の資産を使用する権利を得るリース契約とを明確に区別する必要があります。以下の表は、リース契約を識別するための判断フローをまとめたものです。

判断ステップ確認事項判断
ステップ1契約の対象となる「識別された資産」が存在するか?存在しない場合、リースには該当しません。
ステップ2借手が、資産の使用により生じる経済的便益のほとんどすべてを享受する権利を有しているか?有していない場合、リースには該当しません。
ステップ3借手が、資産の使用を指示する権利(いつ、どこで、どのように使用するかを決定する権利)を有しているか?有している場合、その契約はリースに該当、またはリースを含みます。

特に、IT関連のアウトソーシング契約やクラウドサービス契約など、サービス提供と資産の利用が一体となっている契約については、その実態を慎重に分析し、リース要素が含まれていないかを確認することが重要です。

適用が免除される短期リースと少額リース

新リース会計基準では、すべてのリースを原則オンバランス化しますが、実務上の負担を軽減するため、特定のリースについては会計処理の簡便化が認められています。それが「短期リース」と「少額リース」です。これらのリースに該当する場合、企業は使用権資産とリース負債を計上せず、従来通り支払ったリース料を費用として処理する(賃貸借処理)ことを選択できます。

それぞれの要件は以下の通りです。

免除規定の種類主な要件具体例と注意点
短期リースリース開始日において、リース期間が12ヶ月以内であるリース。コピー機の1年契約などが該当します。ただし、借手がリースを延長するオプションを持っており、その行使が合理的に確実な場合は、その期間も含めて判断するため対象外となる可能性があります。
少額リースリースされている原資産が新品であった場合の価額が少額であるリース。国際的な会計基準(IFRS)では5,000米ドル以下が例示されており、これが実務上の目安となります。ノートPC、タブレット、事務用電話機などが該当します。判断は個々の資産ごとに行うため、多数のPCをまとめてリースする場合でも、1台あたりの価額が少額であれば適用可能です。

これらの免除規定を適用するかどうかは、企業の会計方針として選択することになります。実務負担の軽減効果と、財務諸表の比較可能性などを総合的に勘案して、慎重に決定する必要があります。

【図解】新リース会計基準の具体的な会計処理方法

【図解】新リース会計基準:借手の仕訳イメージ ① リース開始日 (B/S計上) 貸借対照表 (B/S) 借方 (資産) 使用権資産 2,830,000円 貸方 (負債) リース負債 2,830,000円 将来の支払義務と使用権を 現在価値でオンバランス化 ポイント 契約が「見える化」される 1年後 決算 ② 決算時 (費用化と支払) 減価償却費 943,333円 資産を定額法で費用化 現金預金 1,000,000円 支払利息 84,900円 リース負債返済 915,100円 費用は「償却費」と「利息」に分かれる ! 中小企業等は簡便的な取り扱いが可能 重要性が乏しい場合などは、従来通りの「賃貸借処理(リース料=費用)」も認められます。

新リース会計基準の核心は、借手における会計処理の変更です。これまでのオペレーティング・リースのように費用処理するだけでなく、原則として全てのリース契約を資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上する「使用権モデル」が採用されました。ここでは、具体的な仕訳例を交えながら、借手と貸手の会計処理を分かりやすく解説します。

借手の会計処理 使用権資産とリース負債

借手は、リース契約の開始日に、リースする資産を使用する権利として「使用権資産」を資産に、将来のリース料支払い義務として「リース負債」を負債に計上します。これにより、これまでB/Sに現れなかったリース契約が「見える化」され、企業の財政状態をより正確に把握できるようになります。

使用権資産とリース負債の計上額は、基本的にリース料総額を現在価値に割り引いて計算されます。リース期間にわたって、使用権資産は減価償却され、リース負債は利息を計上しながら返済されていきます。

原則的な処理の仕訳例

具体的な数値例を用いて、リース開始時から期末までの会計処理の流れを見ていきましょう。

【設例】

  • リース期間:3年
  • 年間リース料:100万円(後払い)
  • 割引率:3%
  • リース資産の耐用年数:3年(定額法で償却)

まず、リース負債の計上額を計算します。これは、各年のリース料を割引率で現在価値に割り引いた合計額です。この設例では約283万円となります。使用権資産も同額で計上します。

■リース開始日の仕訳

勘定科目借方勘定科目貸方
使用権資産2,830,000円リース負債2,830,000円

■1年目の期末(決算日)の仕訳

決算時には、リース料の支払い、リース負債に係る支払利息の計上、使用権資産の減価償却を行います。

勘定科目借方勘定科目貸方
リース負債915,100円現金預金1,000,000円
支払利息84,900円
減価償却費943,333円使用権資産943,333円

このように、費用として計上されるのが、従来のリース料ではなく「支払利息」と「減価償却費」に分かれる点が大きな特徴です。

中小企業も利用可能な簡便的な取り扱い

上記のような原則的な処理は、特に多数のリース契約を抱える企業にとって実務的な負担が大きくなります。そのため、重要性が乏しいリース契約については、簡便的な会計処理が認められています。

例えば、「中小企業の会計に関する指針」では、重要性の乏しいリース取引について、支払リース料を費用計上する、従来通りの賃貸借処理を継続することが可能です。また、原則法を適用する場合でも、利息の計算を簡略化する方法などが用意されており、自社の規模やリース契約の実態に応じて、適切な会計処理方法を選択することが重要です。

貸手の会計処理 従来からの変更点

借手の会計処理が大きく変わる一方、貸手の会計処理には抜本的な変更はありません。従来通り、リース契約をその経済的実態に応じて「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類し、それぞれに応じた会計処理を継続します。

ファイナンス・リースは金融取引とみなし、リース債権を計上します。オペレーティング・リースは、リース資産を固定資産として計上し、受け取るリース料を収益として認識します。ただし、借手の会計処理変更に伴い、契約内容に関する注記情報の拡充など、開示面での対応が求められる点には注意が必要です。

財務諸表と経営指標へのインパクト

新リース会計基準:財務諸表と経営指標へのインパクト 1. 貸借対照表 (B/S) の拡大(オンバランス化) 従来 (オペレーティング・リース) 資産 負債 B/S計上なし 新リース会計基準 使用権資産 資産 リース負債 負債 総資産・総負債が増加 2. 損益計算書 (P/L) 費用の分解と利益への影響 従来 賃借料 (営業費用) 新基準 減価償却費 (営業費用) 支払利息 (営業外) 営業利益・EBITDAへの影響 支払利息が「営業外」へ移動するため 営業利益・EBITDAは増加傾向 ▲ 3. 主要経営指標 (KPI) への影響まとめ 自己資本比率 低下 ▼ 分母の総資産が増加するため ROA (総資産利益率) 低下 ▼ 分母の総資産が増加するため EBITDA 増加 ▲ 営業利益+減価償却費が増加

新リース会計基準の導入は、単なる会計処理の変更に留まりません。特に、これまでオフバランス処理されてきたオペレーティング・リースが貸借対照表(B/S)に計上される「オンバランス化」は、企業の財務諸表の見え方を一変させ、それに伴い主要な経営指標にも大きな影響を及ぼします。ここでは、具体的なインパクトを財務諸表ごとに詳しく解説します。

貸借対照表(B/S)への影響 資産と負債の増加

新リース会計基準における最も大きな変更点は、借手の貸借対照表(B/S)への影響です。従来、費用として処理するのみであったオペレーティング・リース契約について、将来のリース料支払義務を「リース負債」として負債計上し、それと同額をリース資産を使用する権利として「使用権資産」として資産計上することになります。

これにより、これまでB/Sに現れてこなかったリース契約が可視化され、総資産と総負債が同時に増加します。特に、店舗やオフィス、工場などを多数賃借している小売業や飲食業、航空業界などでは、資産と負債が大幅に膨らむ可能性があります。この変更は、企業の財政状態の実態をより正確に反映させることを目的としていますが、見た目の財務健全性が悪化したように見える場合があるため注意が必要です。

貸借対照表(B/S)への影響比較
項目 従来の会計基準(オペレーティング・リース) 新リース会計基準
資産 計上なし 「使用権資産」を計上(資産増加)
負債 計上なし 「リース負債」を計上(負債増加)

損益計算書(P/L)への影響 費用の構造変化

損益計算書(P/L)においても、費用の計上方法が大きく変わります。従来の会計処理では、支払リース料を毎期ほぼ定額で販管費などの費用として計上していました。しかし、新基準では、この費用が2つの要素に分解されます。

具体的には、資産計上された「使用権資産」に対する「減価償却費」と、負債計上された「リース負債」に対する「支払利息」をそれぞれ計上します。支払利息はリース期間の初期に大きく、徐々に減少していくため、減価償却費と支払利息の合計額は、リース期間の前半に大きく、後半に小さくなる傾向があります。つまり、費用が前倒しで計上されることになります。

また、支払利息は営業外費用として計上されるため、これまで支払リース料として営業費用に計上されていた金額の一部が営業外費用に振り替えられます。その結果、営業利益やEBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)は、従来よりも増加する可能性があります。

自己資本比率やROAなど主要な経営指標の変動

財務諸表の構造変化は、企業の財務分析に用いられる主要な経営指標に直接的な影響を与えます。企業はこれらの変動を事前にシミュレーションし、ステークホルダーへ適切に説明することが求められます。

主な経営指標への影響は以下の通りです。

主要な経営指標への影響
経営指標 計算式 新基準による影響 理由
自己資本比率 自己資本 ÷ 総資産 低下する傾向 総資産が増加するため。
負債比率 負債合計 ÷ 自己資本 上昇する傾向 リース負債の計上により負債が増加するため。
総資産利益率(ROA) 当期純利益 ÷ 総資産 低下する傾向 総資産が増加するため。
EBITDA 営業利益 + 減価償却費 増加する傾向 支払リース料が減価償却費と支払利息に分解され、支払利息が営業外費用となるため、営業利益が押し上げられるため。

特に、自己資本比率や負債比率の変動は、金融機関との融資契約における財務制限条項(コベナンツ)に抵触するリスクも考えられます。自社の経営指標がどのように変動するのかを正確に把握し、必要に応じて金融機関と事前に協議しておくなど、慎重な対応が不可欠です。

企業が準備すべき実務対応

新リース会計基準への移行は、単なる会計処理の変更に留まらず、全社的なプロジェクトとして計画的に進める必要があります。経理部門だけでなく、契約を管理する各事業部門や情報システム部門との連携が不可欠です。ここでは、企業が具体的に準備すべき3つの重要な実務対応について、ステップを追って解説します。

対象となるリース契約の網羅的な把握

新基準適用の第一歩は、社内に存在するすべてのリース契約を正確に洗い出すことです。従来は費用処理(オフバランス)が可能だったオペレーティング・リースも、新基準では原則として資産・負債の計上(オンバランス化)が求められます。そのため、これまで管理対象外だった契約も含め、リースに該当する可能性のある契約をすべて特定する作業が極めて重要になります。

具体的には、以下の手順で網羅的な把握を進めます。

  • 契約書の棚卸し:本社・支社・営業所など、全部門で保管されている賃貸借契約書やサービス契約書を収集・整理します。
  • 勘定科目の精査:「賃借料」「支払手数料」「保守料」といった勘定科目で処理されている支出をリストアップし、その原契約を確認します。
  • 各部門へのヒアリング:経理部門が把握していない契約が存在する可能性があるため、各事業部門の担当者にヒアリングを実施し、契約内容を確認します。

特に注意が必要なのは、契約書に「リース」という文言がなくとも、実質的にリースの定義を満たす契約です。IT機器のレンタルや保守サービス契約などに含まれる「資産の使用権」を識別し、新基準の対象となるか否かを慎重に判断する必要があります。

会計システムの改修と業務フローの見直し

新リース会計基準では、使用権資産とリース負債の計上、減価償却費と支払利息の計算など、会計処理が大幅に複雑化します。従来の会計システムやExcelでの手作業による管理では、対応が困難になるだけでなく、ヒューマンエラーのリスクも増大します

そのため、多くの企業で会計システムの改修やリース管理に特化したシステムの導入が不可欠となります。システム対応を検討する際は、以下の点を考慮しましょう。

  • リース契約情報の一元管理機能
  • 使用権資産・リース負債の計算(割引率の設定、現在価値計算)の自動化
  • 減価償却費・支払利息の計算と会計仕訳の自動生成
  • 新基準で求められる開示情報の作成支援機能

同時に、業務フローの見直しも必須です。契約を締結する段階でリースに該当するかを判定するプロセスを新たに構築し、事業部門と経理部門がスムーズに連携できる体制を整えることが求められます。決算業務においても、リース関連情報の収集から開示資料の作成までの流れを再設計する必要があります。

株式会社プロシップも注目する開示情報の準備

新リース会計基準のもう一つの大きな特徴は、財務諸表利用者への情報提供を目的として、開示項目が質・量ともに大幅に拡充される点です。固定資産・リース資産管理システムで国内トップクラスのシェアを誇る株式会社プロシップのような専門企業も、この開示要件への効率的な対応をシステム開発の重要課題としています。

企業は、これまで以上に詳細な情報を注記として開示する準備を進めなければなりません。主に求められる開示情報は、定性的情報と定量的情報に大別されます。

新リース会計基準で求められる主な開示情報
情報の種類 主な開示内容の例
定性的情報 リース活動の概要、リースの構成(不動産、機械装置など)、将来のリース契約に関する重要な情報、リース期間の決定方法、割引率の算定方法など
定量的情報
  • 使用権資産の資産クラスごとの帳簿価額
  • 当期の減価償却費および減損損失
  • リース負債に係る利息費用
  • 短期リースおよび少額リースの費用計上額
  • リースに関連するキャッシュ・アウトフロー総額
  • リース負債の帳簿価額と、その満期分析(1年以内、1年超5年以内、5年超の区分)

これらの情報を正確かつ効率的に集計し、開示するためには、前述の契約管理やシステム対応が基盤となります。早期から開示要件を理解し、必要なデータを収集・管理できる体制を構築しておくことが、スムーズな基準移行の鍵となります。

まとめ

本記事では、新リース会計基準の概要から適用時期、具体的な会計処理、そして企業が取るべき実務対応までを網羅的に解説しました。

新リース会計基準の最も重要な変更点は、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースが原則として貸借対照表に「使用権資産」および「リース負債」として計上される「オンバランス化」です。この変更は、投資家が企業の財政状態をより正確に把握できるようにするという国際的な要請に応えるものであり、財務諸表の透明性と比較可能性を高めることを目的としています。

この基準変更により、企業の貸借対照表では資産と負債がともに増加し、損益計算書では費用構造が変化します。その結果、自己資本比率やROA(総資産利益率)といった主要な経営指標に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に、店舗や設備などをオペレーティング・リースで多数利用している小売業や航空業界などは、そのインパクトが大きくなる傾向にあります。

新基準への対応を円滑に進めるためには、まず自社が締結している全てのリース契約を網羅的に把握し、新基準の対象となるかを正確に識別することが第一歩となります。その上で、会計システムの改修や業務プロセスの見直し、そして新たな開示要求事項への準備を計画的に進めることが不可欠です。本記事で解説した内容を参考に、自社の状況に合わせた適切な準備を進めてください。

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